2000年代の電子辞書業界を引っ張ってきたのは間違いなくカシオ・シャープ・SIIでしょう。
ただ、一時代を築きかけていた電子辞書メーカーがもう一社あったのです。
それがキヤノン (Canon、「キャノン」でなくキヤノン)です。
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キヤノン電子辞書は2018年時点でも発売中
てっきり製造・販売中止になっていると思っていましたが、改めて調べてみるとこんな表記を発見しました。
Wikipediaからの引用です。
関連会社の事業[編集]
キヤノン株式会社からの事業移管、あるいはグループ会社の自主事業として、関連領域のビジネスを展開している。
情報機器[編集]
キヤノンが世界で初めてテンキー式入力の電卓の製品化に成功した。現在は、キヤノン電子が、ハンディターミナルを、キヤノン電産香港有限公司が電卓・電子辞書などのパーソナル情報機器を、キヤノンファインテックニスカがRFIDカードプリンターを、それぞれ開発・製造・販売している。電子辞書はwordtank(ワードタンク)シリーズとして好評を博している。
後述しますが、キヤノンのHPを見ても確実に販売はしています。
キヤノンは既に業界を撤退しているという認識の人が多いですが事実とは異なります。
有名どころでいうと、「wordtank (ワードタンク)」です。
この独特な縦型の形をご覧になったことがある人も多いのではないでしょうか。
記憶が曖昧ですが、私も大学生時代に誰かが持っていたような気がします。
横型が主流の中にあって、電子辞書業界の異端児的な存在だという認識でした。
・・・しかし。
名器「Word Tank (ワードタンク)」の多くは既に生産完了
残念ながら、Wordtank (ワードタンク)は新規製造はされていないようです。
品番別に以下のリンクにて確認できます。
ワードタンク生産完了品リスト → http://cweb.canon.jp/wordtank/lineup/old-products/index.html
キヤノンは電子辞書市場から完全に撤退したわけではありませんが、明らかに縮小しています。
その理由について調べましたが、詳細は確認することができませんでした。
2012年を最後に生産をしていないということは、恐らくスマホ普及による辞書機能アプリ・ブラウザの大衆化が要因だと個人的には考えます。
同じような理由で当時業界2位、3位を競っていたセイコーインスツルが2015年に電子辞書業界から撤退していますので、キヤノンはそれよりも3年早く損切りをしていたのではないでしょうか。
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しかしながら、「ワードタンク」、「キヤノン 電子辞書」などで検索しますと、Amazonや価格.comでワードタンクを購入することはできるようです (2018年1月時点)。
各小売店の在庫が余っていることと、中古品がマーケットプレイスで販売されているためですね。
市場に残っている以上、販売元としてもサポートは必要と判断しているのか、HPにはお客様相談センターのページを見つけることができました。
キヤノンの電子辞書に関する問い合わせ → http://cweb.canon.jp/e-support/rc/tel/dictionary.html
現在のキャノン電子辞書ラインナップ
さて、それでは2018年1月現在、キヤノンの電子辞書ラインナップはどうなっているのでしょうか?
当サイトでは基本的に社会人向けの電子辞書、かつ使用目的は英語としてご紹介してきましたので、今回も「高校生向け」および英語以外の言語向け専用機種は除いて考えたいと思います。
「詳細は当サイトでは書ききれないのでHPをご覧ください」、とご紹介しようと思いましたが、調べた結果、“IDP-700G”と“IDP-610”の2種類しかありませんでした。
以下はCanon HPからの抜粋です。
まさかの当サイトでも詳細を紹介できるボリュームでした。
繰り返しですが、ワードタンクについては既に生産は終了しているものの、アマゾンや楽天などでは在庫の点から、未だ販売中ということになっています。
“IDP-610″および、”IDP-700G”も2007年から販売を開始しているようですので、歴史はワードタンクと同じくらいですね。
では、キヤノン電子辞書の最新モデル (といっても2つしかありませんが)、”IDP-700G”についてご紹介します。
既に上の画像にて一部答えを出してしまいましたが、怖いくらいシンプルな電子辞書です。
国語系 x 3、英語系 x 3、合計6つの辞書を収録しています。
カシオ EX-Word RISEなど最新モデルでは、収録辞書・コンテンツ数が100を超える電子辞書が多い中、6つだけです。
辞書数・コンテンツ数の多さは、電子辞書の評価に比例するとは考えていませんが、それにしてもシンプルでコンパクトな電子辞書ということになりますね。
キヤノン電子辞書の特徴 (特長)
このシンプル極まりない電子辞書の特長が、キヤノンのHPに記載されていましたのでご覧ください。
・・・む?
見間違いでしょうか・・・?
・・・復唱します。
・ 国語&英語 充実の6コンテンツ
・ 読めない漢字を調べるのに便利な部品検索
・ 電卓機能つき
6コンテンツが充実というのがまず凄いですが、部品検索は最近の電子辞書には必ずあります。
そして、特長として電卓機能を推すとは・・・中々やりますね。
ちなみにAmazon.comのページでは、追加で文字サイズ切替可能と書かれていました・・・。
なお、誤解の無いように申し上げておきますと、キヤノンには高校生用モデルのwordtankシリーズが発売されています。
最新機種は2012年3月に発売された”wordtank Z410″になるのでしょうか。
このシリーズではカシオやシャープの様に多様な辞書およびコンテンツを収録しています。
Canon電子辞書は日本の高齢化社会に必須の電子辞書
IDP-700G、およびIDP-610Jは、間違いなく日本人高齢者向けの商品だと言えます。
そのシンプルさや文字表示のサイズから、そのターゲットは明らかです。
電子辞書業界では、中学生用、高校生用、社会人用という括りに始まり、最近では理系用、医学用、他言語用などさまざまなターゲットが確立されてきました。
そして、いよいよ高齢者用に絞るメーカーが登場したということなのでしょう。
私も感じていますが、無駄に辞書やコンテンツの数を増やすことには嫌気がさしています。
英語辞書として活用することは多々あるとしても、「生活辞典」や「ことわざ辞書」などは使う機会が無いため不要であり、ユーザーとしては明らかに冗長機能となっているでしょう。
その点からすれば、IDP-700G、およびIDP-610Jは大変優れていると言えるのではないでしょうか。
ちなみに、私は大学生時代、ゼミの授業で「電子辞書はハコとソフトを別売りにして、ユーザーが欲しい機能だけ使える様にすべきではないか?」というディベートテーマを掲げたことがあります。
10年後には、こういったことが普通になっていると思っていましたが、現状そんな気配は全く無いですね (追加でソフトを入れることはできますが)
この電子辞書のシンプル化のトレンドは2018年以降、一気に加速すると考えています。
2020年の東京オリンピックを控え、英語学習熱はさらに高まっていくでしょうし、電子辞書の売り上げも増えるでしょう。
しかし、その結果、ユーザーからの本質的な声が上がり、メーカー側がその対応に追われるのでは無いかと思うのです。
「高齢者用モデルだから不要」と決めつけずに、必要な辞書・コンテンツを見極め、キヤノンの電子辞書を利用してみるのも賢い選択の一つだと思います。