インドネシアに駐在して早くも1年4ヶ月が経過しようとしています。
この間、しばしば「アジアで働くとなったら、どれくらいの英語力が求められますか?」という質問を受けることがありました。
本記事ではこの質問について考察してみたいと思います。
前提
「アジアで働くにはどれくらいの英語力が必要か」
会食の席などでこういった会話が繰り広げられるのはごく普通に思えます。
しかし、深掘りして考えてみると非常に曖昧なワードが多いことにお気付きでしょうか。
アジア → 具体的にどこ?
働く → これまでのキャリアを活かした職? パートタイムでもよいの?
英語力 → L?R?S?W? 何をもって英語力?
恐らく質問してくる人からしてみると、「そこまで深く考えていない」ということなのでしょう。
従いまして、求められている答えはざっくりでいいのです。
「そうですね〜、TOEIC 850点くらいですかね!」
きっとこんな回答でいいのです。
いいのですが、敢えて私は深掘りしてみたいと思います。
私なりの定義は以下のとおり。
アジア → 中国、韓国、香港などに東南アジアと南アジアを含めた、英語を母国語としない国。
フィリピンは英語がほぼ母国語であるが含む。シンガポールもほぼ母国語であるが含む。
働く → 今現在、日本で働いている人がそのキャリアに関連する職で「アジア」に転職した場合、もしくは海外赴任した場合。
英語力 → 「アジア」で「働く」際に、必要とされる全スキル。TOEICで測ることは不可。
ちなみに私がこれまで仕事をしたことがあるアジアの国は以下のとおりです。
・ 中国
・ 韓国
・ 台湾
・ 香港
・ フィリピン
・ タイ
・ ベトナム
・ シンガポール
・ マレーシア
・ インドネシア
・ ミャンマー
・ インド
英語が母国語でない人同士での仕事
最初に考えなくてはいけないのがこれです。
アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなど英語を母国語とする国で働くのとはかなり情勢は異なります。
お互い英語が母国語ではないので、「自分の使っている英語を理解してもらっているかな?」といった、謙遜ともとれる姿勢で誰もが英語を使ってくれます。
スピーキングはもちろんですが、英文メールにおけるライティングやリスニングでもそういった場面はよくあると思います。
従いまして、英語を母国語としている国で働く、もしくはそれらの国出身の人と働くよりはハードルは低いということです。
いわゆるネイティブレベルの英語力 (S・W・L・R)は不要となります。
あなたの仕事で使うスキル (S・W・L・R)は何か
次に考察すべきは仕事で使う具体的な英語スキルです。
これは正直千差万別だと思いますが、ITエンジニアだとしても間違いなくスピーキングは絶対に必要だと思います。
私は営業職ですので特にスピーキングを使う機会が多いですが、一日中事務仕事の人だとしても同僚の人とのコミュニケーションをしなくてよいということはないでしょう。
かといって残りのW・L・Rが不要かと聞かれたら、実はそんなことはないと思います。
スピーキングをする上でリスニングスキルはないと会話になりませんし、Eメールを打つ機会なんてのは確実にあるでしょう。
Eメールを打つということは、スピーキング・リスニングの関係と同様、読むスキル (= リーデイング)が必要になりますので、結局4技能全てが重要だという結論になりそうです。
TOEIC LR, SWや英検で「仕事で使う英語力」を測れるか
先述した「そうですね〜、TOEIC 850点くらいですかね!」で表したように、日本でメジャーな英語試験をもって「アジアで働く際の英語力」を測れるかという疑問が生じます。
みなさん毎日TOEICの勉強をしていると思いますが、リスニングで流れてくるナレーターは英語を母国語とした人です。
いくらあの英語を聞いても、アジアで同じものは (ほとんど)出てきません。
「アジア英語TOEIC」なるものが出てきてもいいくらいに、今ではAsian Englishが増殖していますので、これについては直結しているとは言い難いのが正直なところ。
ご存知だと思いますが、TOEIC Listeningで流れてくる英語はとても綺麗な発音で、リズム良く、噛むことなく、クセもないものが流れてきます。
新形式になってから、若干リアルっぽくしてはいますが、なんでしょ。
私からしますと、やっぱり「演技っぽい英語」でしかないわけです。
と言いましても、TOEICや英検で学ぶ英語はアジアでは全く役立たないということでもありませんしね。
英語力を発揮するに当たっての「人間力」が大事
色々と考察を続けてきたつもりですが、自分自身でも「薄っぺらいこと書いているなー」と正直感じています。
なぜでしょうか?
「アジアで働くに当たって英語力は必要ない?」
・・・いやいや、そんなことはない。
英語を話せないと仕事になりません。
英語を100話せる人と、20しか話せない人では仕事のアウトプットも変わってきます。
「やっぱ職種によって異なるから関係ない?」
・・・うーん、これも違うと思います。
仮に仕事ではPCに向かって仕事をするだけで言葉を発しないとしても、仕事が終わって買い物する時とか、大家さんと話する時とか、タクシーに乗る時とか、現地に住むことによって英語を使う場面なんて幾らでもあるはずです。
・・・と、ここまで色々と考えてきてなんとなく見えてきました。
これまでに検証してきたような要素を最大限発揮するための「人間力」なるものがアジアで働くに当たって必要なのではないでしょうか。
「はて? 人間力ってなに?」って感じですが、そうですね・・・例えば。
「オレ、英語ペラペラ話せるよ〜?」
とイキがっている人がいたとしても、積極的に人に話しかけようとしなければ何の価値もない。
「私の英文メールは誰よりも丁寧で素晴らしいんです」
と余裕ブッ込んでいる人がいたとしても、相手の懐に飛び込んでメールを打とうとしなければ何の価値もない。
どちらも人間力がないケースの例です。
逆に言えば、英語が全然使えないという人でも、「失敗してもいいからどんどんアウトプットしていこう!」という人であれば、アジアで仕事することはいくらでもできると思うんです。
ただこれは、欧米諸国だと結構キツイかなと思います。
基本的に「自分たちがNo. 1」と思っているフシがある彼等は、言うならばアジア人の懐に飛び込まない傾向にあると一般的に言われていますから。
よって、欧米諸国では、「英語力:人間力」が「5:5」くらいで必要だとしたら、アジアでは「3:7」くらいの割合になるということですかね。
私の周りには「2:8」で頑張っている日本人も大勢います。
それと「人間力」には、雑学というか予備知識なども含まれると思います。
英語がいくら話せても、話す内容が何にもない人が結構います。
アジア諸国で天気について話をする人は基本的にいませんので、宗教・スポーツ・酒・ナイトライフ・・・この辺を押さえている人とそうでない人とでは、その「人間力」の厚みに相当な違いが生じてしまうのです。
(現時点での) 結論
では今回の検証で得た結論を。
アジアで働くには、TOEIC LRは800点 (L:R = 400点:400点)、TOEIC SWで160点 (S:W = 80点:80点)、英検で言うと準1級に合格した上で、何かを成し遂げたいという意欲、相手の国を敬い懐に飛び込もうとする姿勢、様々なことに挑戦した経験などの人間力を掛け合わせた、アクティブ英語力 (今勝手に名付けました)が必要になるということにしました!
アクティブ英語のイメージ的には・・・、その人がもっている英語力を如何にアジアという環境下で使いこなせるかどうか・・・とかですかね。
なお、人間力の係数は「0.5, 1.0, 1.5, 2.0」の四段階で表現できると思います。
「0.5」の場合は、TOEIC LR800点だとしても、アクティブ英語力としては400点になります。
逆に、人間力が「2.0」の人はTOEIC LRスコアが400点だとしても、アクティブ英語力としては800点として評価されます。
まぁただの考え方の一つですので、ご参考までに。