元ライブドア社長の平松庚三さんが執筆した「君は英語でケンカができるか?~プロ経営者が教えるガッツとカタカナ英語の仕事術~ 」が、当サイトの読者様に大変おすすめできるのでご紹介したいと思います。
平松庚三さんはソニー、アメックス、AOLなど数多くの経歴を重ね、ライブドア再建を引き受けた偉大な方です。
英語あるいはTOEICの世界では有名ではありませんが、ビジネスの世界では知らない人はいないでしょう。
その平松庚三さんが、英語に関する書籍を書いていまして、Amazonで品切れ状態だったのですが、この度ようやく購入することができました。
リアルな現場での英語話が満載
私はTOEICが大好きで大好きでどうしようもない男ではありますが、TOEICだけでその人の英語人生が終わってしまうことは非常にもったいないと常々記事にしてお話ししてきました。
せいぜい900点を超えたら TOEICの勉強は卒業し、よっぽどこのことがない限りビジネスの場に役立てる方向に勉強をシフトすべきだと考えます。
ハイスコアをとった自分自身を優越感に浸らせ、暇つぶし的にTOEICを受験し続けるのは完全におかしいです。
TOEICは「仕事で英語を使うに当たってのレベルアップ手段」が本来の位置付けです。
決してTOEIC自体を否定しているのではありません。
昨今のTOEICに対する世間の扱いに疑問を感じているだけです。
そんな感じで現役の外資系営業マンとして、ビジネスの現場における「英語 x 仕事」の話を展開してまいりましたが、この平松庚三さんの著書は非常に興味深く読むことができました。
<関連記事> 『英語を活かす職業・仕事に就きたい』という人に伝えておきたい「決して甘くない現実」5つ
私のサイトの読者様は、多くが仕事で英語を使っている人、もしくは将来英語を使った仕事をしたいと考えている人です。
学生さんからも頻繁にご連絡を頂きますが、圧倒的に現役のビジネスマンが多いのが特長です。
(それも20代と40代がメジャーで、なぜか30代が少ない・・・)
<外資系営業マンのTOEIC (R) 900点の勉強法・対策の推定読者層 (2015年5月時点)>
今回紹介する書籍は、そういった人たちにとって有益な情報が満載で、非常に多くの気づきを得ることができます。
平松さんが社長として起こった事柄の話ですので、私のような一般サラリーマンでは同じ目線で共感することは難しいかもしれませんが、間違いなく「ビジネスの現場で使われている英語」の話です。
こんな貴重な体験談を、1,380円で知ることができるのですから、買わない理由が見つかりません。
TOEICが何点だったかが、その人の”成功”になってしまうのはおかしい
読んでいて印象深かった箇所を幾つかご紹介したいと思います。
英語力は持っていて当然。文法的に正しい英語を話せなくとも、どんどん刷新され、時に定義すら変わるテクニカル・タームを的確に駆使し、しかも、ネイティブのテンポで話せねばならない。
基本、仕事においては「誰々の英語力が高い」とか「低い」とかって話は出ません。
出るべきではないんです。
英語力は持っていて当然ですから。
しかも、使われている英語は常にその時代に合わせて変化が起こりますので、それにも適宜対応しなくてはいけません。
わかりやすい例で言うと、規格とかです。
自動車の規格、電気品の規格、国での規格。
どんなビジネスにも規格・ルールは存在し、毎年毎年刷新されています。
もちろん、規格の内容は知っていないと話になりませんし、それを英語で理解することも求められます。
そう考えると、いつまでたってもTOEICを勉強し続けることってどうでしょう?
未だにTOEIC LRを趣味で勉強してしまっている私にも、非常に耳の痛い話ではあります。
ビジネスの英語は流麗さより、言いたいことがいかに確実に伝わるかが勝負である。
説明不要だと思いますが、仕事で英語を使うならばこれが全てです。
『「いかに伝わるか」ってのは英語の流暢さ・発音などが大事なんじゃないのー?』
と思われる人もいらっしゃると思いますが、それ以前に大事なことがあるため、「流暢さ・発音など」は意外と重要視されていません。
結局のところ、「伝えたい気持ち」といった、英語以外の要素が大事なわけです。
人種のるつぼのアメリカでは、これまでにも世界各地から移民を迎え入れてきたが、今なおビジネスの最前線には世界中から優秀な人材が集まってくる。
だから、ヒスパニックばかりか、インドや韓国や中国系の連中の訛りの強い英語も聞き取れないと、お話にならない。
TOEICでの世界では、アメリカ英語・イギリス英語・カナダ英語・オーストラリア英語しか存在しませんが、実態は異なります。
TOEICでいくらリスニングを勉強しても、「アメリカ英語なら聞き取れます!」としか対外的に言えないようであれば、それは価値がないことを自分で認めてしまっていることになります。
「価値がなくても別に構わない」とかそういった主観の話ではありません。
<関連記事> 欧米・アジアの人達とサラリーマンとして仕事を9年間してきた後に思う「グローバル 英語・人材」という言葉への違和感
多くのサラリーマンが海外出張を経験し、海外赴任には家族も同伴させるから、帰国子女の数は増えており、女子アナウンサーなどにはバイリンガルも多い。
が、ほとんどの人が”後付け”で英語を身につけるのだ。
およそ国内の小中高大の学校教育ではそれが足りないから、英会話学校にも通い、TOEICの勉強などもする。
しかし、そういう人たちには往々にして、英語学習自体が目的化している傾向がある。
英語を使いなにをするかが先に問われるはずなのに、英検1級をとったとかTOEICやTOEFLが何点だったかが、その人の”成功”になってしまう。
だから、英語習得以外の目標を持って留学をするとか、国際ボランティアに参加するなどで現場英語を使いこなしてきた人のほうが、人間力にも勝り、なによりその英語が身についている気がする。
正にその通りだと思います。
最後のフレーズに関しては、私の口からは直接言いにくいことですが、異議は全くありません。
TOEICだけの世界に住み続ける人よりも、現場英語を使いこなしてきた人のほうが全ての点において勝っていると言えるでしょう。
建設的なケンカはしていいのだ、とどこかでわかってもらわないことには同じ土俵に立てない。
日本語でケンカもできない相手に英語でのケンカを勧める、というのも妙だが、日本語よりずっとシンプルで、明確な意思表示に向いている言語が英語だ。
その英語を用いて自分の考えを強固に伝える練習は、きっと日本語で自己を主張するときのも役立つのではないか。
それが本書を作る基本的なアイデアだった。
同感です。
日本語よりも何倍も英語の方がケンカしやすい。
私は日本語が下手くそなこともあり、日本人と仕事で言い争うような経験がありません。
一方的に言われて一人でシュンとなることは数多くありましたが。
一方で、英語ではそんな自分が一変します。
フランス人の院卒1年目のプロジェクトマネージャーの至らぬ点を指摘に指摘しまくって、その人を担当から外させた経験もあります。褒められたことではありませんが。
仕事で明確な意思表示をするなら日本語よりも断然英語の方が楽です。
ボクは英語をスキルなどと思ったことはこれまでに一度もない
英語を使って仕事をしたいと考えている人は、もう一度自己分析をした方がいいと思います。
「英語で仕事」は響きがいい表現ですが、わかっている人からすれば薄っぺらい表現にしか映らないこともあります。
セールスや交渉に不可欠のコミュニケーション力、そして、リサーチには必須のリテラシー力、情報を整理し推論を立てていくマーケティング力、企画を立てる際に発揮される戦略立案力、資料作成まで含めたプレゼンに必要なプロデュース力、予測不可能な事態にも対応する問題解決力、プロジェクト牽引するリーダーシップやフォロワーシップ、さらには最低限の財務や法務に関する知識、そして、それらすべてを操る英語力が必要というわけだ。
が、ボクは英語をスキルなどと思ったことはこれまでに一度もない。
まずなにより、それは言語であって、英語圏だけに限らず、世界中でのコミュニケーションのツールだからだ。
究極、この位置付けをきちんと理解できていれば、「TOEIC900点オーバーしたことが成功」だなんて到底思うことはできないはずです。
TOEICを勉強するビジネスマン、英語を使って仕事をしているビジネスマンには希望が湧いてくる一冊だと思います。